令和7年度/未来を創る!フードテックビジネスコンテスト
【ATR特別賞】
受賞者インタビュー
南由希さん(株式会社レボーン)
2026年2月に開催された「令和7年度/未来を創る!フードテックビジネスコンテスト」本選大会。その中でATR特別賞を受賞した株式会社レボーン 南 由希さんにお話を伺いました。
「嗅覚DXによる“香りデータ”がつくる新しい食品ブランド価値」をテーマに挑んだ今回の提案。その背景には、どのような課題意識と展望があったのでしょうか。
香りを「客観的に扱えない」という構造的課題
南さんが取り組むのは、「嗅覚DX」によって食品業界が長年抱えてきた課題を解決することです。
「私たちは『嗅覚DX』によって、食品業界が長年抱えてきた“香りを客観的に扱えない”という構造的課題の解決に取り組んでいます。」
食品開発や品質管理の現場では、香りという重要な価値要素が熟練者の経験や主観に依存してきました。その結果、評価のばらつき、技術継承の難しさ、試作の大量廃棄、消費者ニーズとのミスマッチといった課題が生じているといいます。
「特に代替食品や健康志向食品の拡大、高齢化による嗅覚変化など、食の多様化が進む中で、香りを科学的に把握できないことが大きなボトルネックになっています。」
そこで南さんらは、においセンシングデバイス「Obre」とAI解析システム「iinioi cloud」を用いて香りを数値化し、PCA分析による“香りMAP”として可視化。さらに、消費者の好意度データを統合した「嗜好統合型香りMAP」を構築しました。
「どの香りが、どの層に支持されているのか。競合とどこが違うのか。それを客観的に示すことが可能になります。」
感覚を否定するのではなく、データで補完する。香りをブラックボックスから解放し、食品開発の再現性とスピードを高めることが本プランの核心だと強調します。
社会実装を加速させるための挑戦
本コンテストへの応募も、社会実装を見据えた決断でした。
「フードテックの最前線で挑戦する企業や行政、投資家と交わることで、嗅覚DXをより大きな社会実装フェーズへ進めたいと考え応募しました。」
食品メーカーとの実証機会の拡大、代替食品や地域特産品分野への展開、官民連携による標準化の可能性にも期待を寄せていました。
「第三者からの客観的評価を通じて、私たちの技術が食品産業全体にどのようなインパクトを与えられるのかを確認したいという思いもありました。」
単なる技術発表ではなく、社会課題解決型ビジネスとして評価される場で挑戦したい――それが応募の動機だったといいます。
“香り”をデータ資産へ
受賞が決まったときの心境について、南さんは率直に語ります。
「率直に、とても嬉しかったです。香りは目に見えず、言語化もしづらい領域です。その価値をデータとして提示し、社会的意義まで含めて評価していただけたことは、大きな自信になりました。」
社内では「ようやく時代が追いついてきたね」という声も上がったといいます。これまで地道に積み重ねてきた研究開発が認められた瞬間でした。
同時に、「ここから本格的に社会実装を加速させなければならないという責任も強く感じています」と気を引き締めます。
今後は、クラフトビールや加工食品での導入事例を基盤に、代替食品・菓子・飲料・調味料など多様なカテゴリーへ展開していく考えです。さらに、香りデータを業界横断で活用できる基盤へと発展させ、食品開発の効率化、ブランド価値向上、さらには食品ロス削減にも貢献していきたいとしています。
「地域特産品の香りを科学的に証明し、輸出や観光振興にもつなげていきたい。“香り”を感覚の世界から、戦略的に活用できるデータ資産へと進化させたいと考えています。」
人の感性とテクノロジーが融合する、新しい食品産業の標準づくり。その挑戦は、ここからさらに広がっていきます。