フードテック官民協議会/令和年度

フードテックの可能性を探る!
ビジネスコンテストで見えた未来

令和6年度 フードテックビジネスコンテスト開催レポート

フードテックの新時代へ!――2025年2月7日、「未来を創る!フードテックビジネスコンテスト」本選大会がartience株式会社 インキュベーションセンター(京橋エドグラン29階)で開催されました。フードテック官民協議会が主催、第三回目となる今回は、一次および二次審査を通過した18組が出場しました。

フードテックとは?活性化の意義

フードテックとは、持続可能な食料供給や、美味しく、文化的で健康的な食生活を通じた高いQOL(Quality of Life)を実現する次世代のフードシステムを構築する上で欠かせないキーテクノロジーを指します。人口増加に対応した食料供給や環境保護等の社会課題の解決につながると期待されています。また健康志向やアレルギー対応等、食に求める人々のニーズの多様化に対応するビジネスとしても注目されています。

日本でもフードテックによるスタートアップの動きが活発化する中、農林水産省が2020年10月に食・農林水産業の発展や食料安全保障の強化に資するフードテック等の新興技術について、協調領域の課題解決や新市場開拓を促進するため、民間企業、研究機関、行政から成る「フードテック官民協議会」を創設し、官民連携の取り組みを推進。この一環で、日本発のフードテックビジネスの育成及びフードテックビジネスの認知度向上に繋げることを目指し、令和4年度から「未来を創る!フードテックビジネスコンテスト」を実施しています。

いよいよ本選スタート!

本選では18組の登壇者を5名の審査員の他、多くの協賛企業関係者やフードテック官民協議会会員を含む観覧者が会場、そしてオンラインで見守りました。 初めに主催者を代表して小林大樹・農林水産省新事業・食品産業部長が挨拶に立ち「本コンテストに参加するたびに、新たな気づきやフードテックの可能性の大きさを実感する。100件を超える応募の中から選抜されたファイナリストの発表を楽しみにしている。本コンテストを事業成長や新たなチャレンジにつなげてほしい」と期待を寄せました。

募集プランは、企業や団体において、新たに事業検討が行われているプラン、または既に展開中の事業のうち上市から5年以内の製品もしくはサービスを活用したプランを対象としたビジネス部門と、「食」に関する社会課題の解決に繋がるアイデアを持っている個人(学生を含む)によるプランを対象とした個人部門の2つの部門が設けられています。それぞれの部門のファイナリストは、社会課題と解決のためのビジネスアイデアを提案し、プランの新規性や市場性、実現可能性および社会貢献性などについて熱い想いを込めプレゼンを行いました

登壇者とビジネスプランの概要

ビジネス部門(登壇順、敬称略)

  • 「人手不足に悩む食品企業」と「食品業界で働きたい特定技能外国人」が直接繋がる採用プラットフォーム
    井潟 百之威さん(株式会社スキルディッシュ)

    特定技能外国人材の採用プラットフォーム『SkillDish』は、日本の飲食料品製造業と外食業が直面している19万人以上の人手不足課題を解決する。求人から就業までの採用プロセスをDX化することで、これまで採用手段が乏しかった地方企業や中小企業も自社に適した人材を選考できるようになる。さらに食品業界特有の雇用条件を求職者に的確に伝えられる機能設計と入国前教育により、採用後のミスマッチを防止して長期雇用を実現する。

  • 持続可能な農業生産をカーボンクレジットシステムを使って実現
    石崎 貴紘さん(株式会社フェイガー)

    農業は温室効果ガスの12%の排出源となっていると同時に、高温や渇水の影響により収量や品質に悪影響を受けている業界だ。フェイガーは生産者さまと一緒に農業の温室効果ガスの削減の取り組みを推進しつつ、カーボンクレジットの仕組みを社会実装することで取り組みの収益化のサポートを行う。日本をはじめフィリピン・ベトナム等でも取り組みを拡大し、プロジェクトの中で所得、収量や品質の向上を実現する。

  • 次世代フードデザインで革新する「食」と「健康」
    井上 史之さん(株式会社ノビアス)

    独自の分析技術を応用し、数本の毛髪から個人の栄養状態を非侵襲かつ高精度に可視化する。このデータを基に、栄養バランスを整える食品や食事提案を行い、食生活の改善を支援。さらに、健康食品市場や外食産業と連携することで、個別のニーズに応じた製品開発やメニューの充実を実現する。これにより、より多くの人々がバランスの取れた栄養を摂取できる環境を構築し、食と健康の革新を推進する。

  • 植物のCO2固定機能を向上するグルタチオンを活用した、農業における環境負荷低減および食料増産の両立
    片野田 大輝さん(株式会社WAKU)

    弊社は植物のCO2固定機能を向上させるグルタチオンを含有する高機能有機肥料の開発・販売に取り組んでいる。グルタチオンは植物の体内で生成される、生命維持に不可欠な多様な役割を担う重要な化合物であり、特に、細胞分裂や成長を促進することで、植物体の成長と発達を著しく促進する。また、植物に対して外部から人為的に与えることで、根系の発達、種子収量の向上、バイオマス重の増加などの効果がある。

  • 米麹由来の発酵甘味料「オリゼ」~日本の伝統技術が創る未来の豊かな食卓~
    河原 あいさん(株式会社オリゼ)

    世界最古のフードテック技術「発酵」に着目し、砂糖の代替となる米麹由来の天然発酵甘味料「オリゼ」を開発。健康指向の高まりやフードロス削減等の課題に対し、砂糖不使用商品の開発へ活用する。原料には廃棄米の活用しているほか、日本の発酵技術の海外展開も進める。「オリゼ」原材料は米と麹のみであるため、ヴィーガンやアレルギー対応など、多様な食文化に合わせて使用できる次世代甘味料である。

  • 食品・飲料メーカーで発生する食品廃棄物を原料とした独自の発酵アップサイクル技術による機能性素材開発及び発酵アップサイクルプラットフォームの構築
    酒井 里奈さん(株式会社ファーメンステーション)

    当社は、食品廃棄物を原料に独自の発酵アップサイクル技術で高付加価値な機能性食品原料を開発し、フードロス削減やクリーンラベル対応といったニーズに応えることが可能。多数の食品原料開発を通して、食品廃棄物の発酵アップサイクルに関する情報を蓄積し、原料としての食品廃棄物の調達や、機能性素材の高生産技術の提供を可能とする発酵アップサイクルプラットフォームを構築する。

  • 海藻由来の塩分コントロール技術で、美味しいと健康をトレードオフにしない世界を実現させる
    竹下 英徳さん(トイメディカル株式会社)

    塩分の過剰摂取は、世界の食領域の課題でも最重要であり、WHOは塩分摂取を5g/日以内にすることを勧告しているが、味の嗜好性の問題から達成できている国はないのが現状だ。我々は日本古来の海藻食を発展させた塩分コントロール技術で、食事に含まれる塩分量を減らすことなく、体内吸収量をオフセットさせることで、WHOの目標に近づけ、『美味しい』と『健康』をトレードオフにしない世界の実現を目指している。

  • 高湿度環境でもダンボールを乾燥に維持出来る鮮度維持技術
    田山 貴教さん(株式会社クールイノベーション)

    弊社技術は化学処理や特殊包装不要、90%以上の湿度でもダンボールが乾燥した空間を作り、生鮮品の長期鮮度維持が出来る。例えば、レタスを30日、イチゴ45日、ブドウ3ヶ月を貯蔵した後に、小売店でも販売出来る鮮度を保てる事で、出荷調整や大ロット運送が可能。消費電力も従来の冷蔵設備に比べ約半分、自然冷媒促進法の1/3補助にも適用でき、導入コストと電気代を劇的に下げる事で、「儲かる農業」の促進に貢献したい。

  • ホットチェーンフードテックを活用した分散型フードサービスプラットフォーム — 初期コスト、労働力、食品安全の課題を解決し、飲食店の販売チャネル拡大を支援
    チェン ジュンさん(Wada FoodTech Group Co., Ltd.)

    ホットチェーンお弁当自動販売機とAIoTトータルソリューションを提供する。調理済み食品を常に65度で保ち、作りたてのような温かいお弁当を20秒以内で提供する。食の安全を守りつつ、人件費削減や業務効率化を実現。既存店舗の省人化や無人化にも対応可能。お客様には、いつでも温かく美味しい食事を楽しんでいただける新たな価値を提供する。

  • 爆速!食品表示ラベルを自動作成するAI -Swallow-
    中川 達生さん(株式会社ROX)

    食品業界では人手不足が深刻で、それが原因の一つとなり、食品表示基準の違反(食品表示ラベルの不掲載など)が問題である。特にパン屋等の個人商店ではこの問題が切実だ。 弊社のAIは、レシピ情報の入力だけ(食品企画書の写メのアップロードも可能)で10秒程度で食品表示の素案を作成し、業務負担を軽減。これにより労働力不足を解消しつつ、商品に対する消費者の信頼を確保し、業界全体の競争力向上に貢献する。

  • 100% 食品廃棄物から新素材を開発する事業
    町田 紘太さん(fabula株式会社)

    弊社は、100% 食品廃棄物から新素材を開発する東大発スタートアップ企業。その食品廃棄物からうまれた新素材は最大でコンクリートの4倍の曲げ強度をもちながらも、原料由来の色や質感、香りを残すことができる。弊社はこの技術で、さまざまな社会課題の解決に挑戦をしつつ、静脈産業におけるものづくりの価値を最大化させる。

  • 蒟蒻で叶える食の自由と健康な未来
    寄玉 昌宏さん(株式会社NINZIA)

    当社は、日本古来の素材であるコンニャクを原料にしたNINZIA PASTEと呼ばれる独自のペースト状素材を根幹とし、結着成型(つなぎ)と食感創成(食感づくり)の技術開発を進めている。それによって、糖尿病や高血圧などの健康課題の解決も進めることができる。この技術を活用した唐揚げやワッフルのような最終製品と量産プロトコルの開発、および他の食品メーカー向けに素材とプロトコルの提供を行っている。

個人部門(登壇順、敬称略)

  • 噛んで予防!「噛むぼこ」~高齢者のオーラルフレイル予防・改善に寄与する製品~
    伊藤 優志さん(仁愛大学)

    高齢者の要介護状態を引き起こす要因として「オーラルフレイル」が注目されている。私たちは「かまぼこ」と「未利用魚」を活用した食品を通じて、この課題の予防・改善を目指す。この食品は、オーラルフレイル予防に重要な「噛む力を鍛える」と「たんぱく質を効率的に摂取する」機能を備えており、咀嚼機能の向上や維持が期待される。高齢者の健康とウェルビーイングを支え、自立した生活を送れる社会の実現に貢献する。

  • 植物の気持ち可視化&動画配信サービス
    岡崎 駿さん(株式会社リコー)

    農家の収益改善を目指し、植物の気持ちを可視化し動画配信をするサービスを提案する。土壌や気温等のデータを基に、生成AIを用いて植物の感情を表現。農作物に愛着が湧き、高い値段をつけたいと思うことで、JA規格外農産物の廃棄や低価格設定の課題解決を図ります。また、植物の感情を表現しつつ成長過程の動画生成、配信を提案する。顔出し不要でファンマーケティング可能となり、販売しやすい環境を構築する。

  • アップサイクル型災害食パックごはん「さつまクルん」
    佐藤 拓人さん・永井亜美さん・水上英香さん・森成雅さん(新潟大学)

    規格外野菜の廃棄問題と災害関連死問題の解決を目指した、アップサイクル型災害食ご飯パック。避難時に美味しさと栄養を提供するほか、繰り返し使用可能な衛生的な容器により利便性を確保する。さらに、娯楽要素を取り入れることで、避難生活中の精神的ストレスを軽減する効果も期待できる。これらの3つの強みを活かし、環境と人の両面に貢献する新しい災害食の形を提案する。

  • 『新廻魚』~「もったいない」を美味しいに!未来型エコフードビジネス
    星﨑 圭亮さん(宮崎大学)

    『新廻魚』は認知のなさや形状などの理由で商業価値が低いために廃棄されてきた「もったいない魚」を活用する未来型エコフードビジネス。現在、日本では年間約30万トンの未利用魚が廃棄されており、この資源を活用することで食糧ロス問題や魚離れの克服、地域経済の活性化のみならず持続可能な水産業の発展と世界規模の食糧問題の解決に寄与する。

  • 未来の水供給システム「Sky Aqua Transport」
    渡辺 紳一郎さん

    Sky Aqua Transportは、海上で自然蒸散により真水を生成し、電気分解で水素を得て空輸するシステム。飛行船型ドローンで水素を輸送し、現地で水と電力を同時に生成する。飛行船の皮膜はCO2由来で、肥料としても再利用可能。パイプラインに依存せず、災害や紛争の影響を受けにくい柔軟な水供給ソリューションを提供する。

  • ヘルシーな食文化&和食の原点である精進料理に着目した、京生湯葉を用いた創作精進料理のファストフードチェーンブランドyuppa
    渡邊 尋思さん(フリーランス)

    時間がない中でも、第一に食べることを楽しみながら栄養バランスも考慮されているクイックミールとして、精進料理と生湯葉に着目した新しいファストフードを提供する。全て植物性原料で作られており、菜食主義の方にも食べていただけるブランドだが、”精進料理”を共通言語として用いることで間口を狭めることなく、ヘルスコンシャスなビジネスパーソンから菜食主義の方まで楽しんでいただけるようなブランドを創っている。

第三回フードテックビジネスコンテスト
表彰者が決定!

それぞれのプレゼンテーション後は審査員によるコメント・質疑応答が設けられ、アイデアを深掘りする視点や助言がありました。その後、別室での審査を経て下記の通り各賞が発表されました。

審査員の株式会社UnlocX 代表取締役CEO・田中 宏隆さんが「今年もレベルが一段と向上し、日本のフードテックの未来に大きな可能性を感じた」と講評。さらに、「世界の食に起因する社会課題を解決しながら、食の可能性を最大化できることこそ日本の強み」と述べ、今回のコンテストを契機に異なる企業や技術の融合によって新たなソリューションが生まれることへの期待を示しました。最後に、「共に業界を発展させていきましょう。これからの挑戦を応援しています!」と力強く呼びかけ、会場は熱気と高揚感に包まれました。

登壇者、審査員、サポーター、参加者の皆さんでの交流会

本選大会終了後は毎年好評の交流会へと移り、登壇者と審査員、協賛企業が活発に意見を交わしました。熱気に満ちた議論が続き、盛況のうちに幕を閉じました。

最後に

本選大会は1次審査、2次審査を通過されたファイナリストの皆さんに登壇いただき、「大きな刺激を受け、学びの機会となった」「審査員やサポーターとの交流を通じ、アイデアを進めるための有益なアドバイスを得られた」といった声が寄せられました。協賛企業からも「ユニークな技術やビジネスモデルを持つスタートアップを知ることができた」「今後の協業を前向きに検討したい」といった反応があり、新たなビジネス展開への可能性が広がりました。また、登壇者にはそれぞれのビジネス内容に応じた副賞として、協賛企業から実証に向けた情報提供や施設利用などが贈呈され、今後もこのネットワークを活用できる機会が提供されます。

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