フードテック官民協議会/令和7年度
過去最多142件の挑戦!
フードテックが描く次の未来
令和7年度 フードテックビジネスコンテスト開催レポート
注目が集まる今、フードテックは次の段階へ――フードテック官民協議会は、2026年2月13日(金)、Tokyo Innovation Base(東京都千代田区丸の内)において、「令和7年度 未来を創る!フードテックビジネスコンテスト」本選大会を開催しました。第四回目となる今回は過去最多となる142件のアイデアの中から、一次および二次審査を通過した15組が出場しました。
フードテックとは?活性化の意義
フードテックとは、持続可能な食料供給や、美味しく、文化的で健康的な食生活を通じた高いQOL(Quality of Life)を実現する次世代のフードシステムを構築する上で欠かせないキーテクノロジーを指します。人口増加に対応した食料供給や環境保護等の社会課題の解決につながると期待されています。また健康志向やアレルギー対応等、食に求める人々のニーズの多様化に対応するビジネスとしても注目されています。
日本でもフードテックによるスタートアップの動きが活発化する中、農林水産省が2020年10月に食・農林水産業の発展や食料安全保障の強化に資するフードテック等の新興技術について、協調領域の課題解決や新市場開拓を促進するため、民間企業、研究機関、行政から成る「フードテック官民協議会」を創設し、官民連携の取り組みを推進。この一環で、日本発のフードテックビジネスの育成及びフードテックビジネスの認知度向上に繋げることを目指し、令和4年度から「未来を創る!フードテックビジネスコンテスト」を実施しています。
いよいよ本選スタート!
本選では15組の登壇者を5名の審査員の他、多くの協賛企業関係者やフードテック官民協議会会員を含む観覧者が会場、そしてオンラインで見守りました。初めに主催者を代表して河南 健・農林水産省 大臣官房総括審議官(新事業・食品産業)が挨拶に立ち、「昨年設置された『日本成長戦略会議』においてフードテックが重点分野の一つに位置付けられ、官民投資のロードマップ策定に向けた検討も進んでいる。」と紹介しました。さらに「過去最多の応募があったことに、社会的関心と期待の高まりを実感している。本コンテストを契機に、社会課題の解決と“稼げる産業”の実現につなげてほしい」と期待を寄せました。
募集プランは、企業や団体において、新たに事業検討が行われているプラン、または既に展開中の事業の内、今後全国もしくは海外への展開を目指したプランを対象としたビジネス部門、「食」に関する社会課題の解決に繋がるアイデアを持っている個人(学生を含む)によるプランを対象とした個人部門の2つの部門が設けられています。それぞれの部門のファイナリストは、社会課題と解決のためのビジネスアイデアを提案し、プランの新規性や市場性、実現可能性および社会貢献性などについて熱い想いを込めプレゼンを行いました
登壇者とビジネスプランの概要
ビジネス部門
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EarthyでHealthy! ごぼうによる”ポストカカオ”のビジネス開発”MelBurd & GOVOCE”
井上 淳詞さん(株式会社あじかん)世界的なカカオ供給不安と価格高騰を背景に、国産ごぼう由来のチョコレート風素材「MelBurd/GOVOCE」を開発。焙煎・熟成発酵による香気制御と油脂結晶構造解析により、カカオ不使用でもチョコレートに近い嗜好性と口溶けを実現しました。ごぼうの健康効果や、国産ごぼうを守るという思いに強く共感してくれるパートナーを探し、豊かな香りと、チョコレートのような味わいをもつ食材を普及させ、国内外での市場形成を目指します。
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独自の米粉製パン技術で、制限とおいしさをトレードオフにしない食の世界を実現する
宇佐 崇志さん・宇佐 育代さん(宇佐米粉製パン株式会社)食物アレルギーや健康制限は世界的に増加していますが、対応食は「おいしさを妥協するもの」と捉えられがちです。私たちは、米粉100%・28品目アレルゲン不使用・無添加を前提に、発酵制御や水分・焼成プロセスを統合した独自の製パン技術を開発。米粉特有のぱさつきや再現性の課題を克服し、制限があっても心からおいしい食体験を実現します。おいしさと健康をトレードオフにしない食の社会実装を目指しています。
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「紙」で地中温度を下げ、収量をアップ 『OJIサステナマルチ』
森本 親さん(王子ホールディングス株式会社)王子グループの紙製農業用マルチシート「OJIサステナマルチ」は、夏場の高温障害の原因となる地温上昇を最大5℃抑制し、作物の収量向上を実現するサステナブルなフードテック製品です。使用後は土壌で分解され、回収・廃棄作業が不要なため農業従事者の負担を軽減。脱プラにも貢献し、環境保全と生産効率向上の両立を可能にします。 (※黒色ポリエチレン製マルチ比、リーフレタスで収量30%増の事例あり)
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中性子線変異乳酸菌による果実残渣アップサイクル~発酵フルーツティー創出と地域資源循環モデル~
宇留野 秀一さん(株式会社クォンタムフラワーズ&フーズ)中性子線育種で耐酸性を高めた乳酸菌により、果汁工場等で発生する高酸性の果実残渣を安定発酵させるフードテック事業です。Non-GMOの地元由来菌を用い、従来は飼料・廃棄されていた残渣を発酵フルーツティーへアップサイクル。食品ロス削減と産地の高付加価値化を両立し、「国産果実×発酵」による地域循環型の機能性飲料市場を開拓します。
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食品輸出のハードル「海外規制」の悩み「0」(ゼロ)を目指す!食品輸出支援システム
西田 陽介さん(株式会社スマショク)世界の食品市場は、現時点で約1,300兆円という巨大市場です。日本は、輸出目標として現在の1.5兆円から2030年までに5兆円という数値を掲げています。しかし輸出には「法令のハードル」、具体的には「衛生基準」「添加物」などの違いがあり、多くの加工食品の輸出できない現状があります。現地の法令を把握するだけでも困難であり、大手でさえ苦慮しています。私たちはこの問題に対し、システムで解決をしていきます。
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AI × 植物工場による「世界にはばたく日本発プレミアム抹茶」フードテック創出事業(略称:AI抹茶世界展開事業)
宇佐美 由久さん(株式会社ファームシップ)世界で抹茶需要が拡大する中、日本では高齢化・担い手不足や気候変動の影響により、抹茶栽培の維持が難しくなっている。この隙を突き、海外ではアジア勢が供給力を武器に市場拡大を進め、日本の主導権が揺らぎつつある。我々は、AIを活用した次世代型植物工場により、高品質で成分が安定したプレミアム抹茶を通年生産する。日本産抹茶の競争力を回復し、GX・食料安全保障・地域再生に貢献するフードテック事業を立ち上げる。
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肉・魚に次ぐ第3の選択肢「Deats(ディーツ)」:おから×こんにゃくで実現するアップサイクルフードの社会実装
香取 惟さん(ディーツフードプランニング株式会社)国内で年間約70万トン発生する「おから」などの食糧残渣を独自技術「HUG製法」で食品へ再生し、肉・魚・卵・米まで代替できるアップサイクルフード「Deats」。大豆臭など原料由来の匂いを抑える無臭化技術と、食感・風味を自在に調整できる凝固・加工技術により、肉や魚に遜色ない美味しさを実現。食品ロス削減、環境負荷低減、健康改善、食糧価格高騰対策を同時に進めます。Meat、Fish or Deats? 肉・魚に次ぐ第三の選択肢を提案します。
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こんにゃくが変える防災食の未来【NINZIA BOSAI】
寄玉 昌宏さん(株式会社NINZIA)NINZIA BOSAIは、「見せる」「味わう」「植物性」をテーマにした、オフィス向け次世代防災食システムです。日常から置き社食としてアクセスでき在庫の一元管理システムを以て、アクティブローリングストックを実現。第一弾製品『欧風カレー』ではNINZIAの食物繊維制御技術と不二製油の『MIRACORE』を組み合わせた完全植物性組成により、常温でも美味しい濃厚な味と、食の多様性の担保を両立しています。
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美味しく、健康で、サステイナブルな、麹でできた「マイコプロテイン」
田中 美帆さん(NoMy Japan 株式会社)NoMyは真菌を用いて食品加工工場から排出される副産液をアップサイクルし、高タンパク質源となる菌糸体ベースのタンパク素材「マイコプロテイン」に転換し高付加価値製品として販売することで、企業の新たな収益事業を確立し経済的なリターンを企業にもたらすプロセスを提供。食品廃棄物から新たな食品を生産し、日本国内の食料自給率向上に貢献、自然の循環に根ざすサーキュラーエコノミーを構築しながらバリューチェーンを変革する。
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嗅覚DXによる“香りデータ”がつくる新しい食品ブランド価値
南 由希さん(株式会社レボーン)当社は独自のプロファイリング技術を用い、これまで人の主観や経験に頼ってきた「香り」の数値化・可視化に取り組んでいます。競合比較や消費者の嗜好データを統合した「香りMAP」により、新商品の方向性を科学的に導き出し、試作回数の削減や開発スピード向上、食品ロス削減を実現。さらに本技術を多様なカテゴリーへ展開することで、香りデータに基づく食品開発DXを加速させ、ブランド価値向上を支える基盤として確立します。
個人部門
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Umeパウダー 海から農産業を支える資材
佐藤 悠世さん(高知大学)地球温暖化により、世界各地で干ばつと塩害による深刻な農業被害が拡大しており、この農業危機に対し、環境負荷が少なく持続可能な解決策が求められています。 我々は、高い成長性と耐高温性を兼ね備えたアオノリを原料とした農業資材を開発し、保水と耐塩性向上の両機能を兼ね備えた製品で、干ばつ・塩害地域での安定した農業生産を実現し、海藻の力で100年先の人と地球の生活を守ります。
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持続可能で安全なタンパク質供給を実現する「シルク由来培養食品」プラットフォームの創出
中澤 靖元さん(東京農工大学)タンパク質需要の拡大により「タンパク質危機」が懸念されるなか、従来の畜産システムは環境負荷や資源制約など、多面的な限界に直面しています。私たちはその解決策として、細胞を立体的に増殖・分化させる足場材料を用いた培養食品開発を推進します。日本の歴史と産業を支えてきたシルクを活用し、安全性の高い足場材料として応用することで、独自の培養食品生産技術の確立を目指し、安定的なタンパク質供給の実現に貢献します。
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原田くんとその仲間たち ~養殖産業の世界制覇~
原田 隆大さん(代理登壇:牧 慎也)(長岡技術科学大学)海水温度ストレス下でも魚類成長を促進する新規摂食刺激物質を用いた養殖技術を開発しました。実フィールドで適用し、病原体感染リスクの低減、従来飼料の削減等、養殖の課題を網羅的に解決します。技術を開発・提供することで水産業界の持続可能な発展に貢献できるビジネスプランを提案します。
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“NEXT ME BOOST!!”なりたい自分になろう!現役高校生が考える完全栄養食実装システム
坂田 美虹さん(松本秀峰中等教育学校)ジャンキーな食品が多く並ぶ現状の高校購買に完全栄養食を導入し、高校生がバランスの取れた栄養摂取を通じて「なりたい自分」を実現する実装型プラン。栄養課題解決に加え、保護者の弁当作り負担軽減にも寄与する。販売商品は誰が食べても栄養が満たされる完全栄養食とする。学年・部活・通学方法などをもとに必要栄養量を可視化するアプリを併用し、個別最適化された助言を得ることで、生徒と保護者の栄養リテラシー向上を図る。
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竹間伐材を用いた持続可能な養鶏飼料の開発~竹に命を!鶏に力を!地域にみのりを!~
家﨑 諒さん・濱内 優衣さん(三重県立四日市農芸高等学校)私たちは竹間伐材と食品廃棄物を活用したエコな飼料を開発し、飼料価格の高騰と放置竹林の拡大という地域の社会課題を同時に解決する循環型畜産モデルの構築に取り組んでいます。竹のサイレージ化やペレット化によって保存性や給餌性を高め、採卵鶏での生産性及び経済性を確認しました。さらに、自治体・研究機関・企業と連携し、技術の実装とビジネス化を進めることで、地域資源を活かした持続可能な畜産の普及を目指しています。
第四回フードテックビジネスコンテスト
表彰者が決定!
それぞれのプレゼンテーション後は審査員によるコメント・質疑応答が設けられ、アイデアを深掘りする視点や助言がありました。その後、別室での審査を経て下記の通り各賞が発表されました。
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ビジネス部門最優秀賞
香取 惟さん(ディーツフードプランニング株式会社)/肉・魚に次ぐ第3の選択肢「Deats(ディーツ)」:おから×こんにゃくで実現するアップサイクルフードの社会実装
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ビジネス部門優秀賞
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ビジネス部門優秀賞
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個人部門最優秀賞
家﨑 諒さん・濱内 優衣さん(三重県立四日市農芸高等学校)/竹間伐材を用いた持続可能な養鶏飼料の開発~竹に命を!鶏に力を!地域にみのりを!~
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個人部門優秀賞
坂田 美虹さん(松本秀峰中等教育学校)/“NEXT ME BOOST!!” なりたい自分になろう!現役高校生が考える 完全栄養食実装システム
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オーディエンス賞
家﨑 諒さん・濱内 優衣さん(三重県立四日市農芸高等学校)/竹間伐材を用いた持続可能な養鶏飼料の開発~竹に命を!鶏に力を!地域にみのりを!~
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地域創生特別賞
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ATR特別賞
審査員の一般社団法人AgVenture Lab 代表理事 理事長・荻野 浩輝さんが、「個人部門では高校生の挑戦が光り、ビジネス部門でも日本ならではの技術力と“おいしさ”の強みが際立った。今年も日本のフードテックの可能性を強く感じた」と講評しました。 さらに、「人の健康(ヘルシー)と地球の健康(サステナビリティ)を両立する視点こそが、いまのフードテックの本質であり、日本独自の食文化や素材を活かすことが世界への発信力につながる」と述べ、日本発の価値創造への期待を示しました。最後に、「人の健康、地球の健康を守りながら、日本の食文化で稼ぐ産業へ」とのメッセージを送り、今後の共創と挑戦へのエールで講評を締めくくりました。
登壇者、審査員、サポーター、参加者の皆さんでの交流会
本選大会終了後は毎年好評の交流会へと移り、登壇者と審査員、協賛企業が活発に意見を交わしました。熱気に満ちた議論が続き、盛況のうちに幕を閉じました。
最後に
本選大会は1次審査、2次審査を通過されたファイナリストの皆さんに登壇いただき、「大きな刺激を受け、学びの機会となった」「審査員やサポーターとの交流を通じ、アイデアを進めるための有益なアドバイスを得られた」といった声が寄せられました。協賛企業からも「ユニークな技術やビジネスモデルを持つスタートアップを知ることができた」「今後の協業を前向きに検討したい」といった反応があり、新たなビジネス展開への可能性が広がりました。また、登壇者にはそれぞれのビジネス内容に応じた副賞として、協賛企業から実証に向けた情報提供や施設利用などが贈呈され、今後もこのネットワークを活用できる機会が提供されます。